恐山の本物◆魂の声聴く秘術【日本最後のイタコ】松田広子・口寄せ術

監修者紹介 監修者松田広子

 1972年、青森県八戸市生まれ。南部八戸イタコ六世代。現役のイタコでは最年少のため、「最後のイタコ」と呼ばれる。

 南部一之宮・櫛引八幡宮の流れをくむ非常に信心深い家庭に育つ。幼少の頃からイタコとの縁も深く、中学三年生のときに「イタコになろう」と決意。南部八戸イタコ五世代・林ませ氏に弟子入りし、高校一年生の夏から イタコ修行を始める。1991年7月、恐山の夏の大祭(毎年20~24日)でイタコとしてデビューを果たした。

 現在は、八戸市在住の郷土史家・江刺家均氏に師事しながら“オシラ様遊ばせ”など青森に根付く信仰や風習を後世に引き継ぐべく活動中。

■実績
『最後のイタコ』(扶桑社)2013年7月
山本まゆりの八戸イタコ紀行 (ぶんか社コミックス)2016年7月
東北STANDERD 2013年
ライブドアニュース 2013年7月
ダヴィンチ・ニュース 2013年8月
BOOK朝日:著者に会いたい 2013年10月

監修者からのメッセージ

 自らが憑代となり、あの世とこの世、神の世界と私たちをつなぐのが私達、イタコの仕事です。仏様の言葉を伝える口寄せも、家々の守り神オシラ様を遊ばせる「オシラ様遊ばせ」も古くから東北の人々の暮らしに根付いてきました。

 あの世の存在、そして私達『イタコ』という存在はごく身近なものでした。イタコは過去何代もの間、近年でいう身近なヒーラーやカウンセラーとして、大きな役目を果たしてきたのです。イタコは死者や神仏の代弁者として、あの世とこの世をつなぎ、人々の心を癒し元気づける役目を果たして来ました。

 日々、見えない世界から伝えられるメッセージを人に届けるこの仕事を、私は天職だと受け止めています。あわただしい現代では立ち止まる時間がなかなかないかもしれません。ただあなたを見守って下さっている存在は必ずいます。ふと想いを向ければあたたかな安らぎを感じられることでしょう。

 私たちが、常に神仏に見守られていることを忘れないためにも、日本最後のイタコとして、また私が『日本最後』にならないためにも。これからも見えない世界とつながり、その言葉をこの世に伝え、そしてこの伝承を世に伝えていければと感じています。ここで出会ったあなたが温かく導かれますように。